トゥルーマン・ショー
―ジム・キャリーの演技が泣けるー

" アネモネ(白) 花言葉 『真実』 "

メディアの氾濫によって、映画に対する先入観を持っていても、この映画は楽しめます。楽しめるというよりも、むしろ考えさせられると言ったほうが正しいかもしれません。映画の始まりは普段の一般映画とは違う趣で、ざらついた分割画面による、人物紹介から始まる。映画出演者たちの紹介にしてはなにやら人工的だ。この一風変わった、イントロダクションが全世界220カ国、週7日、24時間生中継、視聴者17億人、放送回数は10,000回を越える連続テレビドラマ“トゥルーマン・ショー”である。
『トゥルーマン・ショー』の主人公トゥルーマン・バーバンク(ジム・キャリー)は、毎朝、「おはよう!こんにちは!そしてついでに、こんばんは!」と隣人との1日の挨拶を交わして出勤する。彼は中流家庭に何の不自由もなく暮している。ある日、彼の頭上から照明器具が落ちてきたり、いつも聴いているラジオから、変な会話が聞こえてきたりして、心に引っかかるものを感じる。彼はふと、いつもと違うルートで会社に行こうと決心する。その時から映画はわれわれをトゥルーマンワールドに引き込み、TVの視聴者の一員となる。
映画は、その後もわれわれを容赦なく熱狂的なTV視聴者と啓蒙していく。地下室には家族に内緒のトゥルーマンの“思い出箱”ある。子供のころ、目の前で溺死した父親。水が怖いトゥルーマン。一目ぼれの女子大生のロレーン(ナターシャ・マケルホーン)との恋。この番組のプロデューサー、クリストフ(エド・ハリス)のインタビューや全世界の視聴者とのティーチイン。“トゥルーマンフリークス”の反応。どんな状況に置かれようとも商品のコマーシャルは忘れない俳優たち。高校時代からの親友マローン(ノア・エメリッヒ)との作られた友情。トゥルーマンの心の秘密まで視聴者は知っており、その事実を知らないのは本人だけなのだから残酷である。
また、溺死したと信じていた父親が浮浪者となって現れ、複数の人間によって連れ去られてしまう。どうして突然、父親が出現したのかという流れや父親との再会の場面。ロレーンとの別れ、そして新しい恋人メリル(ローレア・リニー)の出現など、脚本のくだりは白眉である。さらに、トゥルーマンが自分探しに逃走し、それを追うエキストラ兼住人。月が太陽に変わるシーンは、映画を心から愛している監督のなせる技だし、小型TVカメラの設置場所など、なぞ解きのスリルも抜群である。
我、同志、大橋知樹は語ります。「これは宗教映画だと」。クリストフによってコントロールされた危険のない安住の世界や何十年もエキストラを演じ続けている隣人たちの生き方は『宗教』以外のなにものでもないと…。
1998年11月



