フィフス・エレメント

―外国人の瞳は青色なのか緑色なのか私にはわからない。そんな色使いがお気に入り―

" ユーカリ 花言葉 『再生』 "

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リュック・べッソンが16歳にして書き上げた荒唐無稽なアイデアは、映画的な題材であることは紛れもない。なぜならばこの原作は彼が日常を忘れて、夢の中の世界で作り上げた物語であるからだ。彼が16歳といえば1975年で、アメリカ映画やフランス映画が再び元気を取り戻した時代である。スティーブン・スピルバーグの『ジョーズ』はハリウッド史上、初の配給収入1億ドルを記録し、アイデアと才能があれば、アメリカン・ドリームが実現出来ることを全世界に提示した。それに対してフランスでは「エマニエル夫人」の大ヒットによりポルノ映画が全面解禁という、現状を打破するような歴史的快挙が生まれたのである。そういった時代背景の中で、彼は自分の思い描いた世界を、一気に書き留めたのである。

さて出来上がったこの映画、どこが一番良かったかというと、目が痛くなるような、オレンジ色の画調がなんといっても不気味である。と同時にミラ・ジョヴォヴィッチ(リールー)の髪の毛と肌の色とコスチュームが最高にバランスが取れている。前半の見せ場となる警察に追いつめられて、高層ビルから飛び降りる彼女の肢体の美しさは見るものを悩殺する。またイエローキャブの色のコーディネートもこの映画のつぼを外していない。『ダイ・ハード3』で男を下げ、『12モンキーズ』でブラッド・ピットにお株を奪われたブルース・ウィリスも、この映画では久しぶりに生き生きしている。(『パルプ・フィクション』のボクサーもなかなかよかったと、念のため補足します)。忘れてはならないのは、くせものゲイリー・オールドマンだ。無国籍風武器商人をケレン味たっぷり演じきり、妙味も加えている。

遊び心のぎっしり詰まったこの映画は、すべてにおいて工夫されている。アパートの部屋の電化製品や宇宙船の内部。リールーの言葉や記憶またはコーベン(ブルース・ウィリス)のお母さんの使い方はアクセントがきいていて絶妙だ。べッソンが言っているように、ただ単に空想近未来を描くだけでなく、ファンタジーとリアリティーを合わせ持った映画を作ろうとしたことが成功の要因か。

”彼はこの映画を作れて本当に楽しかったに違いない。もしくは残念だったかもしれない”と考えてみる。なぜならば、時代は進歩し、映画もデジタルになっていきローランド・エメリッヒやチャールズ・ラッセルやティム・バートンなどの素晴らしい監督も現れてきた。『フィフス・エレメント』はコンピューター・グラフィックスを使用した最近の映画に比べると迫力の点で若干、見劣りするのは明白である。このチャンスがあと5年早ければと切歯扼腕する監督の姿も目に浮かびそうだ。しかし、自分の少年時代の夢に100億円もの制作費を投じてくれる投資家はなかなかいない。だからこそ今度は、いま現在、心に描いている近未来映画をリュック・ベッソンは作る必要があるのだ。きっと彼はSFではない新たな近未来映画に挑戦するだろう。観客もたぶんそれを期待している。そういった意味において、製作の日本ビクターは価値のある“貸し”を彼に作ったのである。

1997年9月