ショーシャンクの空に
―映画的な興奮に満ち溢れる脱獄映画―

第67回(1994年度作品)アカデミー作品賞は、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノの手によって、トムハンクス主演、ロバートゼメキス監督の『フォレスト・ガンプ』に授与された。アカデミー賞とは、アメリカの映画芸術科学アカデミーが主催し、アカデミー会員(監督、俳優、スタッフ等)約6千人が各部門別に無記名投票し、候補者がノミネートされる。その後、アカデミー会員投票有資格者5,000人強によって、最優秀作品が決定する。
この年は、栄冠に輝いた『フォレスト・ガンプ』のほかに、ユーモアとバイオレンスが共鳴しあった犯罪映画『パルプ・フィクション』や人気TV番組の裏側を描いた、社会派映画『クイズショー』、英国青年と米国女性の恋の行方を追った『フォー・ウェディング』とこのフランク・ダラボン監督の『ショーシャンクの空に』の5作品がノミネートされた。
原題「The Shanshank Redenption」は、10年に1本の映画として、我々の心の中に残る傑作である。刑務所からの脱獄映画は面白いという定義は間違いだ。面白い映画には、面白い法則があり、もしくはそれを完全に覆す法則がある。この映画はまさしく前者であり、見事なまでに映画的な映画である。塀の中と外(拘束と自由)、明るさと暗闇、水と土、生と死、あらゆるテーマが多層に収まっている。空撮によるショーシャンク刑務所のエスタブリッシング・ショットはまさにティム・ロビンス演じるアンディが天使のように舞い降り、希望や夢を運んでくるようだ。
刑務所内で仲間と、ビールにありつく春の珍事。
刑務所内での豊富な中古図書、及び200ドルの予算。
刑務所内での“フィガロの結婚”のLPレコード。
酒が、本が、音楽が人々の心を幸福感でいっぱいにする。
『フォレスト・ガンプ』『フィールド・オブ・ドリームス』などの爽やかな映画とは異なる、人間としての幸せを提示し、聡明な映画的手法を実践することによって、映画として完璧に近い出来栄えである。(女性が出てくるともっと絵がよくなるのだが、それはまったく次元の違うおはなし)。
脱獄したあとメキシコへ疾走するアンディの車、左へハンドルを切る、目の前に広がる太平洋の海。刑務所仲間のレッド(モーガン・フリーマン)が、アンディと再会する場所は必然的だ!二人が抱き合う太平洋の海岸は、青い海と白い砂。青い空と白い雲、無限に広がる水平線と一艘のボート。自由と出発の象徴として捉えるワンショットにこそ映画の醍醐味である。
1995年6月



