法政映画祭り2013
今年の『法政映画祭り』(映画団体協議会主催)は、平日開催で残念ながら会場で鑑賞できなかった。自宅でDVDでの視聴となったが、今回ノミネートされた5作品は、どの作品もユニークで、実に面白かった。
『ミカンの生まる頃、UFOに乗って』は、不条理殺人を現代的なテーマとしてとらえ、綿密な脚本から演技、演出に至るまで非常に高レベルだった。ブロックで10回殴り続けるときの音は追悼の響きをもち、自らの考えを映像に焼き付けようとする監督の思いがひしひしと伝わってきた。
『ハートブロッカー』は、リア充=現実世界での恋愛面の充実を意味する造語らしいが、リア銃なる手真似銃で男女を別離させるというアホらしさとは異なる次元で、きちんと胸がキュンとする恋愛映画に仕上がっている。
『LOVELESS』は、随所に一人称カメラワークを駆使し、観客を不安に落としこむ手法で、不気味さが最後まで持続した作品だった。クリスチャンの主人公真は教会でお祈りし、そして教室の黒板の前で読書をする。教室の四角い黒板や椅子がならんでいる映画的な空間は構図として生かせれているが、もうひとつの映画的空間である教会がまったく生かされていないのが残念だった。
『空中監獄』は、大学内における私設監視組織の壊滅を軽い笑いを通して描いた作品で、映像研究会の同志たちが将来に向けて等身大のメッセージを発信している。改めて、昨年の佐藤監督作品『帰宅部』を見直すと、校門から三方向に出ていく仲間三人の後ろ姿を捉えたラストシーンと同期するように、本作では主人公の一人が校門から出ていく後ろ姿を仲間の二人が見送るという前作の変奏になっている。笑いに加え、校門から出ていく主人公という構図とストーリーをうまく作家性として表現できるようになれば、次作がますます楽しみになる。
最後になるが、ゲスト賞は小泉堯史監督の『言葉』を選んだ。
「好きな本で、好きな音楽で、好きな映画が撮りたい」という監督の声なき言葉が画面の向こうから瑞々しく聞こえてくる。主人公の駆は、大学の図書館で美少女由美と出会う。駆は自作の脚本を執筆中で、由美はドストエフスキーなどのロシア文学を読んでいる。駆を演じた三田裕寛君の演技がうまい。これだけのひとり演技ができるとはなかなかのナルシストである。由美演じる中山なおえさんも、本当にドストエフスキーが好きなのかどうかは知らないが、なんとなく文学少女のように見えて、納得してしまう。納得と言えば、一番の納得は、駈が由美に一目惚れをしてしまうところ。大学生にもなって筆談をするくらいなら、ひとこと言葉を交わせよとツッコミを入れたくなるが、たしかに、思春期の頃を思い起こせば、好きな女の子と話すのは、照れくさくて、恥ずかしくて、遠くから見ているだけで充分だった自分を思い出した。そんな思春期の思いを大学生になった作者=監督が初恋の心で、サイレント映画のようにフリップで会話をつなぎ、クラシック映画のように、由美がパソコンで打った文字を最後まで観客にあかせずに主人公の表情で結ぶ。初恋が成就したのか、失恋に終わったのか、どちらともとれる余韻のラストカットは、われわれが映画監督を志す一番のきっかけとなりうる映画的感動のひとつだ。この映画における駆の「君が好き」という思いは、イコール「映画が好き」という同意語にほかならない。

2013年7月



