法政大学映画祭2012

映画団体協議会(映団協)主催による法政大学映画祭2012にゲストとして参加してきた。今年で3年連続の参加になるが、今回のノミネート作品は、粒ぞろいであった。今回のゲスト審査員は、法政大学教授の岡村民夫氏と慶応大学で映画制作の講師もされている映画評論家の杉原賢彦氏と私の三人だった。私にとって尊敬する二人の先生とご一緒し、作品を論じ合える機会を得られたことは貴重な経験となった。作品審査の投票は、各作品を、①構成(シーン割、全体の長さ)②脚本(セリフ回し、テーマ制)③映像(録画、カメラワーク)④音(BGM、効果音演出、録音)⑤演技(表現、発声、キャストの人選)の5項目を各10点で評価し、合計50点満点で評価した。今回ユニークな取り組みとしては、新人賞作品を各項目5点として評価し、合計25点を基準点とし、本選作品10作品を点数化した。最高得点作品が前回同様『ゲスト賞』になる仕組みだ。さらに、映団協から審査員の自由な視点で選考する『特別賞』を一枠設けていただいた。これまでは賞を受賞した作品にしか講評文を書かなかったが、今回はどの作品も面白く、書きたい衝動に駆られたので、全11作品(新人賞含む)を紹介したい。今年の傾向は、毎年の傾向でもあるのだが、学生らしく就職や友情や恋愛など身近なテーマが多かった。

■『oh!マイゴット!』 若林京輔 40分 <ゲスト賞/観客賞>

oh!マイゴッド

内容は定型的であるものの脚本が良く書けている。主演女優の咲チャンの演技がよい。映画クラブの面々の中で父親が異彩を放っている、本物の役者さんか?また、日記の半分が見えないなど映像演出も冴えている。ラストでは、友人との電話でのやりとりを、花が「咲」いている映像とシンクロさせて、余命半年の彼女が生き続ける権利を得たこともわかる。映画的な表現を駆使し、上手にまとまっている。

■『伝説のコンビニ』 佐藤慎吾   16分 <審査員特別賞>

 何事にもやる気がない学生が、部室に出現したコンビニエンス・ストアでやる気ガムを買って食べたことを端緒に、トイレや校舎のドアを開けると必要なときにコンビニが出現する。幸運チョコや勇気野菜など、作者の笑いの感性が光る。最後に主人公は本当の自信を修得し、彼女に告白する・・・だろう。「伝説のコンビニ」の歌がよい。

■『帰宅部』 佐藤慎吾 12分 <審査員特別賞>

 佐藤監督は、映画の根幹を「笑い」に置き、それを徹頭徹尾追求しているところが頼もしい。帰宅部(どこのクラブにも所属していない学生)が家に帰らないと3ヶ月間は学校から出ることができない(自宅に帰れない)という規則がある。ストーリーは学生的で面白い。演技陣は、ターミネーター風に帰宅を妨害する山本さん、そのほか映像研究会の坂口さん、滝さん、釜田さんなどの面々が、いつものように顔を揃えている。3年間、彼らの映画を見てきた審査経験を通じて妙に親近感がある。3人のターミネータでは、清水信宜監督の短編映画「スミレマンデー」(2006年制作)のラーメン店主を思い出した。映像研究会の作品の充実ぶりに目を見張る。

■『情熱大陸〜佐藤慎吾の軌跡〜』 山田愛美 12分 <審査員特別賞>

 日曜11時に放映されているMBS毎日放送「情熱大陸」のパロディ。佐藤慎吾学生映画監督を追っている。ドキュメンタリー風ではあるが、ラストの上映会は演出(やらせ)であることからドキュドラマのジャンルに入る。特筆すべきは、映像研究会の山本憲司氏のナレーションが、プロ並みの声質で素晴らしい。

■『カコニカケルイマ』 野村悠介 35分

 映画制作の永遠的主題である時間と空間を意識した挑戦的な作品で、映画的な主題を研究し、よく練られている。「今を生きる」という主題に対して、逆説的なタイトルをつけ、主題を際立たせている。人間の造形もできており、映画的に収まってはいるが、全体的に役者の演技が未熟で、作品の奥深さが一度見ただけでは伝わってこない。作品コンセプトの完成度が高いので、音楽もオリジナル曲をつけた方がよい。

■ 『サディスティックキミ』 福西佑太 26分

 野心的な映画的な匂いはするものの、今ひとつ話がわかりにくい。リカ、ユウスケ、モモコ、リカの彼氏の関係(温泉旅行、海外旅行、ケーキ、バウムクーヘンのやりとり)もいまひとつはっきりしない。また、リカがサディスティックになったり、彼氏の食事を作ったり、掃除したり、洗濯したり、甲斐甲斐しく尽くしたり、一体全体何をどう描きたいのか不明である。唐突に卵の殻を割るラストカットは、自分の殻を破るという「変身願望」なのか?駄目な映画のように言葉で説明する必要はないが、映像で構成する力量が欲しい。
※作者にラストの意味を確認したが、あえてここでは解説せず、見た印象のまま掲載しました。

■『アルバム』 薮原 遼 18分

学生時代の「思い出作り」がテーマ。友情を確かめ合う為に旅行を企画する主人公ユウ。仲間3人は気乗りしないが、最後は4人集まる。自分たちの時代を映そうと、就職活動の悩みや、芸能話題を連発するが、残念ながら時代を捉えるまでは成功していない。脚本はかなりアドリブ要素が強そうだ。監督兼主役の藪原さんが画面で輝いている。

■『房総にて』 鈴木史子 14分

千葉県富津に旅行に来たカップルが、宿泊先の旅館で若い男の幽霊と出会い、彼を成仏させるまでの話。全編手持ち撮影で、前半気持ち悪くなる部分もあるが、「見る」「見られる」の関係をストレートに表現し、作品性はマル。さらに、海、夕日、光線をバックに「幽霊」同士を再会させた監督のセンスに感服した。「つづく?」とあるように鈴木史子氏の次回作が早く見たい。手持ちカメラの見苦しさは、幽霊の浮遊性を表現したものと好意的に判断した。   

■『冷凍』 釜田圭介    10分
 とにかく脚本が楽しい。就職の内定をテーマに学生らしく、自ら楽しんでつくっている。就職の内定がもらえない主人公は、内定を獲得する友人を妬み、密室に閉じ込める。冷凍庫の会社に内定した友人を冷凍攻めにするシーンを青い画面に、また電子レンジの会社に内定した友人を熱地獄にするシーンを赤い画面にするのはよいが、冷凍された表情を青くしたり、白くしたり、熱せられた表情に汗をつけたり、しわくちゃにしたり、「ありがち」と言われても、もう一手間を欲しいところだ。

■『青春大面接』 坂口浩樹  9分

 アルバイトの面接。自己紹介と志望理由、そして拳銃でパフォーマンスをやらせる。ブラックマッシュ社の面接官はそのパフォーマンスを見て、「攻撃的」、「内向的」、「創造性がない」、「依頼度が高い」などを理由に駄目だしをする。実は、ブラックマッシュ社は犯罪組織で面接官2人は逮捕され、逆に取り調べられる立場になり、尋問される。立場逆転の「逆(ギャグ)」ストーリー。日頃の就職活動の鬱憤をはらすかのように、履歴書をやぶる二人に、現在の就職状況のやり切れなさを感じた。

■『悲窓』 宮川 陸(一年生A班) 15分 <新人賞>

お土産を買う相手(友人)がいない、筆箱落としても誰も気づかない、おにぎりを一人階段で食べるなど、学生の孤独を描出するシーンが続く。ひとり野沢温泉に向かった学生は、その夜飛び降り自殺を図ろうと、窓を開けて外を覗き込むと、隣の部屋の若い男と目と目が合い、自殺を思いとどまる。翌日学生はその若い男とエレベータで出会い、ゆったりと流れる時間の中を散歩し、語り合う内に心が癒されていく。再生の物語としてテーマは明確だが、ラストに余韻を残す「映画的」な作りは出来なかったか、再考の必要がある。ここでいう「映画的」とは、スクリーンと自己とを結びつけ、心の対話を生成する(映画的)機能をいう。

※ 観客賞:当日会場の観客が投票し、最高得点を獲得した作品
※ 新人賞:映団協の中で選出された作品
※ 特別賞:監督、役者、スタッフなど八面六臂の佐藤慎吾氏の活躍に対して審査員3名より推薦、映団協が認定した作品
※本映画祭は一般公開されていないので、日時、会場は紹介しておりません。


2012年7月