フラッド
―緻密な演出が出来なかった屋内撮影―

" ノコギリソウ 花言葉 『戦い』 "

『スピード』の脚本家グラハム・ヨストのオリジナル脚本を『バックドラフト』『アビス』の撮影監督ミカエル・ソロモンが指揮をとった話題作である。この映画は、東京ドームの1.5倍の怪物屋内プールに2,000万リットルの水を貯め、そこに街全体のセットを沈め、1分間に約12万リットルの人工の雨を降らせる、巨大セットなかで撮影が進行した。
その効果は、ディザースター映画の序章としてふさわしく、間断なく降り続く大雨は、ミシシッピー川流域に位置するインディアナ州ハンティングバークの街を、いまにも飲み込もうとしている。家屋浸水の被害で、街は極限状態の緊張感がただよう。保安官のマイク(ランディ・クエイド)は、町の治安と避難を受け持つ責任者として、辣腕をふるっていた。閑散とした町の酒場では、リーダー格のジム(モーガン・フリーマン)を中心に現金輸送車襲撃の計画を練っていた。準備は万端、残すは計画通り実行するのみ。しかし、計画通りに進まないのが悪巧み。そこには2ヶ月前にセキュリティーポリスとなったばかりの青年トム(クリスチャン・スレーター)が輸送車の護衛していた。
グラハム・ヨストの逆転また逆転のオリジナル・ストーリーを、ミカエル・ソロモンは撮影監督出身らしく、映像的にこの雨が、この建物が、このライトの光がどのように観客に見えるかを意識しながら演出している。特撮的には成功したかのように見えるが、この映画の欠点は、ストーリーの先が読めてしまうところだ。美術や音楽や撮影、編集、演出に至るまで素晴らしい仕事をしていると思うが物語が薄い。これは窒息死寸前のように受け入れがたい。残念ながらその一点のみが、この映画の評価を下げる理由である。
1998年9月



