第5回湘南映像祭審査員長 五嶋正治さんに聞く

湘南映像祭の母体でもあるNPO法人湘南市民メディアネットワークは運営上の予算不足や諸々の問題で、2009年度の第5回湘南映像祭を中止せざるを得ない危機的状況のなかで出発しました。その困難を乗り越え、無事本審査会、表彰式まで漕ぎつけた映像祭の要、五嶋正治先生にお話をうかがいました。
―不安を抱えたままの船出でしたが・・・
NPO法人のそもそもの立ち上げは,映像祭を基軸とした活動です。何が何でもやらなくてはいけないと思いました。なんのためにNPOが出来たのかを今一度考えて欲しいと、第二回目から審査委員長をさせて頂いております。事務局の森氏から依頼の打診が電話で有った時に応えた言葉は「世に中、“金とって責任取らず!”という事が多いけど、今回のお仕事は、“金要らずで、責任は取る“という条件でお引き受けしました。今回で5年目。予算と人員が無くて出来ないなら、出来る方法を考えることしかないよね!と言いました。
大学生達を動員して実施することを提案しました。理事会に出席していた文教大学の高田先生の一つ返事で賛同して下さり、高田ゼミの大学院生に電話をして、映像祭の中核になるスタッフにならないかと打診をしました。
映像祭を運営するにあたって、今回5つの大学に声をかけました。過去に作品参加してくれた大学。神奈川大学の高城先生、駿河台大学の間島先生、武蔵大学の松本先生。コアになる先生と普段からの信頼関係が有りましたので、2つ返事でOKをもらうことが出来ました。
―第1回の学生実行委員会は大勢の人数が集まりました
第1回目のキックオフミーティングには埼玉の飯能から、電車賃往復3千円も費やして何人も参加して下さいました、全員で25名が集まりました。その時は驚きと感激でいっぱいでしたね!何とか映像祭を成功させなくては!と感じました。
これまでの湘南映像祭は、NPOがアルバイト代を手伝いの高校生や大学生に支払って実施していましたが、今回事務局からはほとんど人件費や交通費、食費といった費用は出ていません。大学生が自主的に、会議スケジュールを決めて、定期的に話し合いをしていました。時には各大学のリーダーだけが集まり易い(電車賃の安い)新宿に集まり、何時間も話し合いをしていました。学生たちのボランティアで、映像祭が出来る!かも?と実感出来た瞬間だったかもしれません。
―学生実行委員会の役割とは
今回の湘南映像祭は作品をつくる人を育てると共に、その映像祭実行委員の学生たちを育てる事も目的にしました。
運営スタッフとして意見をすり合わせ、一つの目的に向って準備を進めます。大学の教室では学べない、教育の場としたかったのです。
初めて出合った仲間と、信頼関係を形成しプロジェクトを実施する。そのイニシアチブをとっていく、今の若者たちが不得意とするところです。一般的に言われているのは、今の若者はテレビゲームで遊んでいる。PCでインターネットをしているが、双六ゲームはやっていない。一緒に何かを作れない。今回の映像祭実行委員たちは、大きな試練と達成感という学び多き半年間であったと思います。
―新しい「賞」としての大学賞を作りました
今回の運営に携わった学生達を、審査に参加させて上げたかったです。
商品は各大学から何とか何かが貰えると考えていました。最低でも表彰状は準備できると思えましたので、各大学の実行委員たちが選ぶ作品の審査をして貰いました。他者が制作した作品を評価する!という作業からは多くの学びがあります。そして、文教大学の川合先生が毎回ご担当して下さっている一次審査をこの二十数名の学生達が担当する事にもなりました。
―「日本ユニセフ協会賞」の経緯について教えてください
ワンミニッツ作品(1分間で作られた作品)が湘南映像祭に昨年から出品されていました。
オランダで開催されている『ワンミニッツジュニア』に応募した作品が入賞し、東海大学学生が入賞し、昨年秋に招待されました。私は引率としてそこに参加し、自分でも非常に勉強になりました。ヨーロッパ地域のユニセフがこの活動に大いにバックアップしていました。帰国すると直ぐに日本ユニセフ協会にメールを送り、湘南映像祭への協力を打診しました。私としてはかなり真剣に、更に慎重にアプローチしましたが、その後、長い期間返事が頂けない状況が続きました。
12月の半ばに待ちに待った連絡。それも、「会いたい」という返事でした。日本ユニセフ協会学校事業部副部長の三上さんは、慎重に世界の動向を調べたいたとの事でした。ヨーロッパでも、ニューヨークでも、若者たちが自分たちのメッセージを伝えている“OneMimute”という映像制作活動を行っている事。そして、この映像制作活動には多くの学びの要素が含まれている事を賛同して下さいました。三上さんは、私たち湘南映像祭の趣旨に賛同し、特別審査員として本審査に参加して下さり『日本ユニセフ賞』を与えて下さいました。
―テレビ朝日のメディア教育番組『はい!テレビ朝日です』が密着取材をしてくれました
今回の学生達が初めて挑戦する映像祭プロデュースに、テレビ朝日のメディア教育番組『はい!テレビ朝日です』で追いかけて下さる事になりました。
この番組は、多くのメディア教育に興味のある教員たちが視聴している番組です。メディア教育に取り組んでいる教育現場や市民メディア等に着目した丁寧な取材を行いスポンサー無しで放送している貴重な番組枠でもあります。
http://www.tv-asahi.co.jp/hai/
今年からWebでも視聴出来る様になり多くの方々に観て頂く事が出来ると思います。
―PC教室での学生実行委員主体の予備審査もよかったですね
文教大学の川合先生が中心に進めてくれました。コンピュータールームに集まり、視聴・審査し、ある審査基準を数値で表せた。素直な学生たちの本音が出ていました。教員がいると教員の意見に流されやすくなるが、投票は自分の意見を積極的に入れて、投票してくれました。教員としては、なぜこの作品が、票が高いのかという疑問を投げかけるものも多々ありましたが、そういう思惑を度外視して、面白い作品にも票が入っている。一次審査の評価・やり方は、今後の映像祭の在り方、研究課題、映像の読み解きで検証したら面白いのではないかと思います。また、審査委員の小林さんはそんな今年の映像の中に、去年の世相が反映していると言っていました。テレビメディアを理解するための映像祭であるとも言えるのではないでしょうか。
―映像祭当日に感じた事はありましたか
それぞれの学生たちが自分の個性を活かせた形で貢献できました。これは社会の縮図でもある。デザインが得意な人はチラシを制作する、人前で話すことが楽しい人は司会をする、字がきれいな人は賞状を書くなど側で見ていて面白かったですね!
映像祭当日の朝に感じた事ですが、作品を出品して下さった人々、映像祭を準備して来た学生たち、映像祭として見に来て頂く来場者、そして審査員の先生方。この4重構造の人々全てにどれだけの満足感を作り出すことが出来るのか?という私の課題でした。
―今後に向けた抱負は・・・
初めて挑戦した学生たちによる映像祭プロデュース。
テレビ朝日の番組を見て頂くとお分かりになると思いますが、大成功だったんだと思います。少なくとも、多くの方々に喜んで頂き、学生達の学びと達成感も多く有ったと思います。こん学生が運営する「湘南映像祭」にご賛同頂けるのであれば、今後も継続して行きたいと思います。市民の皆様、教育現場の先生方、作品を作って下さった若者達、そして半年間に渡って多くの時間と交通費を使って協力してくれた学生実行委員会のメンバー達 に感謝の気持ちを込めて「ありがとう!」という言葉を伝えたいです。
後記
五嶋先生と一緒に活動をしたことは、将来において貴重な財産になると確信しています。映像祭の運営に限らず、人生のよきアドバイザーとして、子育ての相談や仕事の進め方、考え方などをピンポイントで教えていただきました。また、学生さんたちと一緒に活動できたことが本当に楽しく、一時的ではありますが、若き青春の日々をとり戻すことが出来ました。ありがとうございました。
2010年3月31日 東海大学にて



