市民がつくるTVF2012

私の格闘家な妹


私も理事を務める「市民がつくるTVF(東京ビデオフェスティバル)」が、2月18日(土)にNPOとして第3回目の発表・表彰式を開催した。私のメインの担当は、午前中に行われた入賞作品上映会(優秀作品賞15作品)のMCだ。作品上映の前に、作品名、作者名、あらすじを紹介するのが主な役割だが、この仕事も正直大変だ。内容のすべて(特に結末)を語ってはいけないし、審査委員ではないので、作品評や感想も極力控えなければならない。「ビデオ大賞」「筑紫哲也賞」「市民賞」は、式当日発表であるため、あまり作品に肩入れし過ぎるとバレてしまう。また、作者が来場していることも、緊張を増幅させ、プレッシャーとなる。作者の制作意図を間違いなく捉えているか、まったく見当外れなことを言いやしないか、戦々恐々としている。作品の詳細は、視聴してから日数もたち忘れてしまっている部分もあるので、二週間前から見直して、文案を練る。それだけの時間と神経を使って作成したので、公開することにしました。当日のMCコメントから若干修正を加えている部分もあります。

<作品上映順>
①「チョコレートの秘密」
江戸川区立鹿骨中学校放送部 の皆さん (東京都)
(えどがわくりつ ししぼねちゅうがっこう)

チョコレートの原料であるカカオ豆がどのように栽培され、どのような過程を経て、販売されているかはほとんど知られていません。中学生が、工場見学ではない方法で、チョコレートの秘密を調べていく過程で、いろいろな人の話を聞き、また自らもチョコレート作りを体験し、学習も深まっていきます。先生やわれわれ大人に真実を伝える様が頼もしい作品です。

②「硫黄島から戻ったイチョウ」
山下 香(やました かおり)さん
中央大学FLP松野良一(まつの りょういち)ゼミの皆さん (東京都)

第2次世界大戦中、2万人以上の戦死者を出した硫黄島。
1979年硫黄島の地下壕で発見された石井康作さんの遺品には、妻百合子さんとやりとりした手紙と息子賢司(けんじ)さんが拾ったイチョウの葉1枚が残っていた。徴兵され戦争の犠牲となった日本人兵士たちとその家族の絆の物語です。

③「TIME SLIP 2」
仙波 晃(せんば あきら)さん (東京都)

1936年、作者の父親が、8ミリフィルムで撮った多摩川スピードウェイのカーレースと観客の様子を現在の映像に引き寄せ、再構成したビデオアーカイブ作品です。丹念な調査と精緻な確認作業は、作品性を高みまで引き上げています。

④「手づくり歌舞伎の「わ」」
蒲 宏樹(かば ひろき)さん (東京都)

東京都あきる野市菅生(すがお)に伝わる農村歌舞伎。
2004年に町内会で結成された菅生一座は、毎年秋祭りに農村歌舞伎を公演しています。キーワードは、手作りとまちづくり。
1年おきに、組立舞台を作り、今回は40年ぶりに竹屋根を作りました。日本全国、祭りは多々ありますが、祭りそのものではなく、祭りのプロセスもカメラで納めたドキュメンタリー作品です。

⑤「子どもたちを放射能から守れ 福島のたたかい」
湯本雅典(ゆもと まさのり)さん (東京都)

東日本大震災による福島原発事故から2ヶ月、放射能の被爆を恐れ、子どもたちは外で遊べないでいる。放射能安全基準数値やその対応について、文部科学省と福島県住民の見解は平行線をたどっています。それらの「いらだち」を汲み取るべく、作者は当事者たちにカメラを向けます。

⑥「じいちゃんとうなぎ」
長妻 洋(ながつま ひろし)さん (茨城県)

孫の運動会のために、夏バテしないよう、地元の堀川でうなぎを釣って食べさせようとする作者。50年以上前には、確かにうなぎは釣れたはずだが、いまでは釣れた話を聞いた事がない。作者はうなぎを釣ることができるのか?

⑦「大福とカラオケ 17年半の原点」
石川 勝(いしかわ まさる)さん (栃木県)

足利事件で逮捕された菅谷(すがや)さん。西巻糸子さんらの努力によって、17年半の獄中生活から自由になった今でも、夜眠れない日が続いています。大好きな大福やラーメンを食べる時、またカラオケを歌う時の菅谷さんの笑顔の中にも、未だに捕まらない犯人への憎しみや誤認逮捕した警察への怒りは消えることはありません。

⑧「私の格闘家な妹」<ビデオ大賞>
箕輪仁美(みのわ ひとみ)さん (栃木県)

私の妹 箕輪綾子。彼女は国際大会で活躍できるような女子ボクサーをめざし、日夜練習に励んでいます。中学の時からコミュニケーションがとれなくなった妹との関係修復をめざし、姉は妹のドキュメンタリーを撮りはじめる。ビデオカメラは、単に記録するだけのものではなく、コミュニケーション・ツールだと改めて感じる作品です。

⑨「恋情 蔵書印」(れんじょう ぞうしょいん)
村上直子(むらかみ なおこ)さん (滋賀県)

図書館司書に恋をした女の子の心情を、ナレーションと本めくり、判子、時計、花びら、蛾などのアニメーション手法で綴ったアート作品。女の子の心の中を覗いてみてください。

⑩「町の鍛冶屋さん~野鍛冶の伝統を守る~」
富山県立 泊高等学校 観光ビジネスコース の皆さん (富山県)
(とやまけんりつ とまり こうとうがっこう)

富山県朝日町で鍛冶屋を営む大久保さんは、全国で唯一「泊鉈(とまりなた)」をつくれる職人です。高校生のインタビューに優しく答える大久保さん。しかし、熱い鉄を打ちつづける眼とその仕事ぶりは真剣そのもの。機械化されていく中、鍛冶屋職人の技術が失われつつあります。

⑪「キャベツとわたし」
河野壽美子(こうの すみこ)さん (愛媛県)

野菜が高騰する中、使い残ったキャベツの芯をコップの中に入れてみた。徐々に緑の葉が増え始める。ある日、長女の家で階段から転落し、右手首を骨折、リハビリをはじめる。キャベツの成長とリハビリの成果を重ねつつ、残り短くなった人生をふと考えるリハビリ・ビデオ日記です。

⑫「炎天下の絆」
黒川 貫(くろかわ とおる)さん (愛媛県)

作者は炎天下の中、コチドリの孵化(ふか)の様子を撮影、モニターで観察しています。生まれたばかりのコチドリのヒナは、カメラフードの日陰に入り、涼みます。コチドリ親子の愛情にほっとする作品です。

⑬「閉ざされた65年前の惨禍(さんか)」 
松田治三(まつだ はるみ)さん(広島県)

「広島、長崎の過ちを繰り返してはいけない」という思いを込め、作者は、娘や4人の孫たちに向けて、妻の被爆体験をもとに、ビデオ制作を試みるが、妻に協力を断られてしまう。作者はあきらめきれず、ある方法論で、思いを実現します。

⑭「子ども達が教えてくれたこと」<市民賞>
白木美和(しらき みわ)さん (山口県)

作者は「こびとのおうちえん」の創設者 大下あつおさんとそこに通う子ども達を取材していくうちに、子どもたちの幸せについて思いを巡らせます。
だいぶ前になりますが、大林監督がテレビ番組に出演した際、「他人のように成功するよりも、自分らしく失敗しよう」と云っていました。この作品を見て、その言葉を思い出しました。

⑮「待合室の、片隅で」<筑紫哲也賞>
NPO法人 映像コミュニティー ムーブユー 
牧野竜二(まきの りゅうじ)さん (北海道)

日本の最北端にある稚内駅で営業をする「そば処(どころ)宗谷」は、駅の再開発によって閉店します。地域の活性化が目的である再開発が、これまで育んできた、小さいけれども、豊かなコミュニティを失ってまで、街の活性化につながるのか、深く考えさせられる作品です。

※市民がつくるTVF2012 発表・表彰式パンフレットより一部引用

2012年2月