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―ジェームス・コバーン主演の『黄金の指』が懐かしい―

" 月桂樹の花 花言葉 『裏切り』 "

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タイトルを日本語に訳せば「カネかえせ!」という意味でしょう。映画を見た観客がその5ワードを発しないことを祈るばかりです。西部劇で頻繁に描かれるウィスキーを消毒液に代用する小道具のアップから、背中に銃弾をくらったポーター(メル・ギブソン)がもぐりの医者に摘出手術を受けるシーンから物語は発進します。そのシーンのなぞ解きが映画のへそとなるべき語り口の端緒である。裏切り、信頼、孤独、仕返し、逆転、根性、まさにメル・ギブソン好みの主題がころがっている。しかし、彼は判断ミスを犯した。

新しいヒーロー像を構築したいのか、ハードボイルドをただ決めたいだけなのか、下種の勘繰りかもしれないが、ただ単に“ICONプロダクション”の映画製作の一環に過ぎないのか。映画の焦点があやふやで映画にまったく感情移入ができない。その理由はいったいなにか。一刀両断!『L.A.コンフィデンシャル』の脚本家が監督デビューともなればもっと危機管理を徹底すべきだった。 

『L.A.コンフィデンシャル』のキム・ベイシンガーと同様、女がただ写っているだけで、女の情念や性などなにひとつとして煮詰まっていない。メル・ギブソンが自分自身で監督すれば主題をもっと明確に出来たはずだ。ちょっと気を引いたのは『ER』にも出ているルーシー・アレクシス・リュウがサド・マゾの中国マフィアとしておかしな役どころを演じているだけ。脇をかためているチャーミングな男優陣はジェームス・コバーンを筆頭に持ち味をさらりと提供している。残念なのはクライマックスの親玉、クリス・クリストファーソンとの対決はB級映画でもさんざん使い古された貧弱な結末。脚本、演出とも未熟。テンポの悪い編集、語り口は冗漫そのもの。フィルムの質感とスリのシークエンスはわたしの好みだけれども、映画全体をカバーするには到底力が及ばない。

第1回監督作品であるブライアン・ヘルゲランドには厳しいようですが、映画批評家に『L.A.コンフィデンシャル』の脚本が認められたからといって、映画監督となって成功するとは限らなかった。残念!

1999年2月