ロスト・イン・スペース

―志が高い良質な映画が生まれた―

" ハナキリン 花言葉 『早くキスして』 "

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「宇宙で迷子になる」というオリジナリティは、1960年代後半に、カルト的人気を誇った『宇宙家族ロビンソン』というTVシリーズである。地球は物質文明が栄えた後、リサイクルも追いつかないほど、環境破壊が進行していた。その解決策は、もはや他の惑星に移住する方法しか残されていなかった。その移住計画遂行のため、ジョン・ロビンソン博士(ウィリアム・ハート)は家族の犠牲のもと研究開発に没頭していた。もうひとつ彼の抱えている悩みは、家族との団欒を拒否し、第2の故郷となる星を求めるスペース探索に家族を巻き込むことだった。しかし、この危険なスペース探索は、むしろこれまでバラバラになっていた家族の絆を取り戻すチャンスと同時に、地球上の誰よりも早く家族全員を、安全な場所に避難させたいと思う家族愛そのものであったのだ。そんな親心も幼い子供の心には通じず、冷徹さだけが子供の胸に深く、深く刻まれていった。そんな家族を演じるのは母親モリーンにミミ・ロジャース、長女ジュディにヘザー・グラハム、次女ベニーにレイシー・シャベール、ひとり息子ウィルにジャック・ジョンソンが個性豊かに演じている。また、腕力はないが、狡猾なスパイ、ドクター・スミスにゲイリー・オールドマン、宇宙船パイロット、ダン・ウェストにマット・ルブランクがスパイスをきかしている。

TVオンエア期の時代設定は、1997年のことで、そこからもう1年もオーバーしている。けれども、映画版では2058年の地球が舞台となっており、今から60年後の世界が現実の世界になるかどうかは別としてよどみなく流れる。最新鋭のCG技術を駆使した、この映画の滑り出しは快調だ。宇宙空間での連邦軍と反乱軍の戦闘シーンは、『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』にも劣らないゲーム感覚とスピード感で迫ってくる。アキバ・ゴールズマンの脚本は出色で、無駄のないストーリー展開、時間軸を巧妙に操作するプロット、くっすと笑わせる洒落た会話など枚挙にいとまがない。スティーブン・ホプキンスの大胆かつ繊細な演出は傑出している。ハイパーゲートを突破するときストップモーション、宇宙で迷子になったジュピター号を探しにくる宇宙船の時空間。ダンがジュディを口説く場面のコップの動きと翌朝の微笑ましい光景。正体不明の惑星から脱出に成功し、ジュディがダンにキスする場面を見つめる父親の複雑な表情。さらにここに登場するキャラクターは “友情”を植え付けられるロボット(フレンディ)、アニマトロニクス技術で、カメレオンのように肌が変幻自在する宇宙モンキーまでみな志が高い。

『エイリアン』でもない、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でもない『スター・ウォーズ』でもないこの映画を、「べたべたの家族愛」「これといった特徴のない映画」「良質なSF映画の亜流」といくら悪口をたたかれようと、断固わたしはこの映画を支持します。

1999年1月