ブギーナイツ
―1970年代の音楽がグレイトです!―

" ナンテン 花言葉 『良い家庭』 "

ここは1977年のロサンゼルス郊外、サンフェルナンドバレー。夜の大通りに輝くネオン、夢と欲望のこの街に、ジャック・ホーナー(バート・レイノルズ)は擬似的なファミリーを形成している。職業はポルノ映画制作のプロの集団だ。アダルトビデオではない。登場人物は、それぞれに癒えない苦しみを抱えている。両親からは見捨てられたが、巨根が認められ新しくメンバーに加わるエディ・アダムス(マーク・ウォールバーグ)は、孤児の象徴。ポルノ女優であるが為に、子供の親権を得ることが出来ないアンバー・ウェイブス(ジュリアン・ムーア)。ニンフォマニアの妻を持つリトル・ビル(ウィリアム・H・メイシー)。ブールス・リーとジェームズボンド映画を、足して2で割ったような空手ポルノ映画の同僚リード。エディに恋心を寄せるゲイのスコティ・J。主人公全員が、支えあい、助け合いながらの共同生活は、エディを肉体的にも精神的にも大人にさせ、芸名“ダーク・ディグラー”として、ポルノ映画界に颯爽とデビューし、数々のポルノアウォードを獲得していく。
いまは1980年、ジャックの邸宅では、ニューイヤーパーティが最高潮の盛り上がりをみせている。その夜のある事件から、エディの人生は坂道を転げ始めるのである。それは、現実のポルノ業界の衰退を体現する暗示でもあった。この物語は、社会からドロップアウトした人々の人間ドラマである。父親的な存在、母親的な存在がいても、あくまで他人の集団である。この映画は主人公全員を、一度われわれ観客側に突き放し、そしてファミリー側に呼び戻す。血を分けた親子より親子らしく、兄弟より兄弟らしい、ギリギリの人間関係を描写する。その根底に流れている精神は“自尊心”である。自尊心があるがゆえみんな心暖かいのである。尻軽な女子高生だけれども、SEXをするときでもローラー・スケートを脱がないローラー・ガール(ヘザー・グラハム)は、その行為によって“自尊心”を守ろうとする。自尊心は人に対して優しくもなれるし、傷つけることも出来る両刃の剣である。象徴的なのは、企画物のビデオ撮影で再会した同級生に彼女はプライドを傷つけられるが、ローラー・スケートで仕返しする重要なシークエンスはこのためにある。このドラマは『自尊心が心の糧』であると、わたしたちに訴えかけている。
追記:
1977年はスペース・オペラ『スター・ウォーズ』が公開され、『サタデー・ナイト・フィーバー』が大ブレイクをした年。その後、“はな金”とか“はな木”とか“はな水”だとか月日が流れていった。1970年代後半がノストラジックに映画化されるような年齢に達してしまった。
日本では、ひらがな“にっかつ”が最後のプログラムピクチャーとして健闘し、才能豊かな若い人材を輩出した。学生時代の僕は、なにか映画のスペシャリストになるべく、暗中模索していた。そのころに出会ったのがポルノ映画である。にっかつ作品や大蔵作品等、100本以上見たなあ。漢字“日活”の名作ポルノを見る為に、“明大前”や“武蔵境”まで足を伸ばしたなあ。それぐらいポルノ映画にはパワーがあった時代であった。
アニー役で『ツイン・ピークス』に登場したときの衝撃が忘れられないヘザー・グラハムは、この映画でオールヌードになっている。まさか裸が見られるなんて想像もしなかったけど、脱ぎっぷりは女優魂そのもの。これから楽しみな女優さんです。ダイアン・レインやナスターシャ・キンスキーのような存在感がある人になってもらいたい。
1998年10月



