マスク・オブ・ゾロ
―娯楽に徹底し、人間ドラマにも手抜きはありませんー

スティーブン・スピルバーグが20世紀最後のヒーローとして選んだのは、映画史にも金字塔を残す、正義のヒーロー“怪傑ゾロ”だ。今回の映画版では、単独でのゾロの活躍を描くだけでない。悪との激闘や不当に長い牢獄生活をおくって、第一線の活躍が出来なくなった先代ゾロが、後継を託す若者に剣や鞭の扱い方を教える過程において、その後継者が人間の真の強さ、優しさに目覚めていく成長物語がベースとなっている。そうした師弟愛に加え、肉親との別れ、立場を超えたロマンス、血沸き肉踊る大活劇などが同時進行形で描かれ、数々のスピルバーグ映画の要素もふんだんに盛り込まれ、エンターテイメント大作として仕上がっている。
製作はもちろん、スティーブン・スピルバーグ。監督は007シリーズ『ゴールデン・アイ』を大ヒットさせた、マーティン・キャンベル。音楽は『タイタニック』でアカデミー作曲賞・主題歌賞を受賞したジェームズ・ホーナー。主演は先代ゾロにアンソニー・ホプキンス。後継ゾロにアントニオ・バンデラス。出生の秘密に戸惑いながらも強い女性を演じるヒロインにはキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。悪玉一味には『ザ・ロック』のスチュアート・ウィルソンとTVドラマで人気のあるマット・レッシャー。
この映画が、エクセレントなのは、ゾロ=アントニオ・バンデラスの踊りと、剣さばきにある。踊りについては折紙付きで、一目ぼれのエレナ・モレロ(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)との華麗なダンスシーンに胸は高まります。また剣術の立ち回りは今回が初めてとのこと。バンデラスとの剣による格闘シーンはお決まりではあるけれども、スカートのすそがピッと切れ、太ももが露出するサービスカットに、思わずニンマリしてしまうほど色気があります。この映画はおまけとして、もうひとつ大サービスを準備している。ゾロは、金鉱で強制労働させられている鉱夫を救出しに向う。そこで繰り広げられるアクションと火薬を使用した爆破シーンは、さすがハリウッド映画と呼べるもので、お金に糸目をつけないところが気持ちいい。
監督のマーティン・キャンベルは、先代ゾロと生涯の敵ドン・ラファエル・モンテロ(スチュアート・ウィルソン)との争いに端を発し、ゾロと兄を殺したハリソン・ラブ大尉(マット・レッシャー)との対立を鮮明に描き、エレナにまつわる相関関係を丁寧に描いている。この丁寧さが、エンターテイメント映画としては大成功を収めた理由である。今後の作品に注目したい監督である。
1998年9月




