L.A.コンフィデンシャル
―生き生きとした男達の演技に乾杯―

" ムシトリナデシコ 花言葉 『罠』 "

"confidential"という単語には「信頼」という意味のほかに、「秘密」という意味があることを初めて知りました。映画は、ロサンゼルスの暗黒世界の恥部にメスを入れながら、誰が巨悪の根源かを突き止めていこうとする刑事たちのドラマである。『L.A.コンフィデンシャル』は、ハリウッドでは無名の二人のオーストラリア俳優とアカデミー受賞のアメリカ俳優との組み合わせにより、最高のアンサンブルを奏でるのに成功した。エド(ガイ・ピアース)は警察学校を首席で卒業し、出世の為なら、仲間の不正も許さない正義漢。バド(ラッセル・クロウ)はモラルのない、偏見のかたまりの熱血漢。もう一人は、ロス市警の活躍を描くTVドラマ「名誉のバッチ」の監修をつとめるジャック(ケビン・スペイシー)だ。彼はダブロイド記者のシド(ダニー・デビート)と結託し、逮捕劇をスクープさせ小遣い稼ぎをしている阿漕なデカである。秘密を握る謎の存在として、3人に絡むのは高級売春組織「白ユリの館」の娼婦リン(キム・ベイシンガー)である。
原作はジェイムズ・エルロイ、脚本、監督は「ゆりかごを揺らす手」のカーティス・ハンソン。監督のカーティス・ハンソンは、見事に主演3人の人物キャラクターを描きわけ、自信を持って演出に徹している。3人の役柄は、はじめエゴむき出しの嫌な人間に描かれているが、実は全員がヒューマンな部分を持ち合わせた、ナイスガイであることに演出の重点を移していく。そこがいちばん共感を生んでいる部分であり、ブライアン・デ・パルマの傑作『アンタッチャブル』にも通じた男達の生き様にも匹敵する。
しかし、この映画の脆弱さは、演出によるものだと思うが、無味乾燥なキム・ベイシンガーの演技により、最後のハッピー・エンドのエクスタシーが伝わってこないのだ。犯人を追いつめていく過程において、決定的な証拠となる「ロロコマシ」いう暗号の解読を、力強い演出で魅了させたにもかかわらず、キム・ベイシンガーの無個性さが画竜点睛を欠いてしまった。
1998年9月



