スライディング・ドア

―グイネス・パルトロウは旬な女優―

" オシロイバナ 花言葉 『恋を疑う』 "

(C)1997 MIRAGE ENTERPRISES and INTERMEDIA FILM EQUITIES,LTD.

5年ほど前、俳優のピーター・ホーウィットは、ロンドンのチャーリング・クロスロードを歩いていた。彼は、反対の歩道にある公衆電話から友人に電話をしようと道を横切ろうとした時、危うく車にぶつかりそうになった。そのときに、閃いたのが『スライディング・ドア』のアイデアだった。もし、あのとき車にぶつかっていたら、自分の人生は一体どう変わっていたであろうか…。

ヘレン(グイネス・パルトロウ)は広告代理店の敏腕クリエイター。作家志望のジェリー(ジョン・リンチ)と同棲している。いつものように彼をベッドに残し、急いで出勤したが突然解雇を言い渡されてしまう。落ち込みながら駅に向かった彼女は、地下鉄に乗ろうとするが、寸前のところで、ドアが閉まってしまう。その時点から、地下鉄に間に合った彼女と、乗り遅れた彼女の人生は、二つの物語として出発する。

電車の中にはクールな男性ジェームズ(ジョン・ハンナ)が乗っており、お互い恋が芽生えそう。もう一方の彼女は、電車に乗り遅れて最悪な気分で家に着いたところ、ジェリーは昔の恋人リディア(ジーン・トリプルホーン)と浮気中。そんな二人の人生の結末が、この映画の主題だ。

私がこの映画に感動した理由は、大胆なアイデアを策に溺れず、嫌みなく、みずみずしく構成した手腕にある。ジョン・ハンナの優しさあふれる好演により涙を誘った感動の場面がある。ヘレンは、ジェームズと彼が離婚したと言っていた奥さんと車椅子の老婦人の三人が仲睦まじいところを、病院の前で見かけてしまう。ヘレンは傷心のまま、愛に終止符を打とうと決心する。しかし、実のところ、ジェームズは、病気療養中のお母さんに心労をかけないように、仲のよい夫婦を演じなければならなかったのだ。ジェームズは、そのことをヘレンに告白するシーンである。

二つの物語のクライマックスは、ここでは記述することは止めておきます。つづきは、映画館もしくはビデオで確かめてください。イギリス映画は『トレイン・スポッティング』のダニー・ボイルや『ミスター・ビーン』のローワン・アトキンズなどの出現により、ブラック・ユーモアが盛んにもてはやされている。しかし、『スライディング・ドア』には、97年にアカデミー作品賞にノミネートされた『フル・モンティ』と同じく、人を優しく見つめる視線があった。やさしさにあふれる視線の映画が、注目された印象的な年でもあった。

1998年8月