スリーパーズ
-モンテ・クリスト伯の「巌窟王」が読みたい-

" トリカブト 花言葉 『復讐』 "

この映画の構成は大きく分けて3つから成り立つ。序論であるヘルズ・キッチンでの子供たちの位置付けと彼らが犯した過ちまでの導入部。本論である刑務所の中での拷問と虐待。結論である復讐劇と無罪を勝ち取るまでの法廷劇(過去との清算)である。
この物語をいっぺんに受け入れようとすると2時間30分もの映画が全く退屈になるおそれがある事を指摘したい。バリー・レビンソンは決してストーリー・テラーではないのだ。意識的で唐突さの手法で見せた少年期から青年期への繋ぐカットにしても、うまくキャラクターが繋がっていないのは明白だ。したがって、ストーリーを追うことに神経を集中させると、後半になっていく段階で観ているほうは息切れし、白けてしまいそうな危うさがある。この映画の前半から中盤にかけての注目点は、1960年代のニューヨークの一地区が、ヘルズ・キッチンと言われる街で、街全体が非合法であるけれど、家族的な秩序と掟で暮らす事が出来る風景を味わってほしい。また、刑務所内での屈折のない子供たちの演技とケビン・ベーコンの憎々しい声と足音を楽しむことをお勧めしたい。
そして、後半の見所といえば、なんといってもブラッド・ピットの演技を第一に挙げたい。彼の視線や指先や座りずまい(こんな言葉あったけ?)が魅力的だ。次に挙げるとすればもちろんダスティン・ホフマンその人だろう。場面、場面登場するたびに我々の目を奪い、釘付けにする存在感。なんたって、この人の悪い性分は共演者たちをみんな食ってしまうところにある。その悪意ある演技は、共演者がハリウッドで成功するかどうかを判断する試金石になっている。すでに『レインマン』での彼のオーバーアクションを上品に受け止めたトム・クルーズ、『クレイマー・クレイマー』で彼のお株を奪ったメリル・ストリープ、そして独自の感性ですらりとかわしたブラッド・ピットが成功例になるであろう。
最後に、『スリーパーズ』の主題である友情の絆や家族の絆が街の空間の中に力強く生きづいたのはロバート・デ・ニーロの抑制の効いた名演とヘルズ・キッチンを描出した美術のクリスティ・ジアと撮影監督のミヒャエル・バルハウスの共同作業が実にうまく作用したたまものである。
1997年3月



