2020年劇場鑑賞作品
2020年初頭は、新型コロナウィルスがここまで人類を苦しめるとは正直思っていなかった。コロナ禍において、映画館で映画を観るなんて不行届者と思われるのは承知の上で、映画ファンとして昨年度の映画鑑賞について思いを寄せたい。私の定館は、横浜駅西口にある東急系列の『ムービル』である。昔から通い慣れているということもあるが、そこに行く最大の理由は、帰宅途中に気軽に行けるということと、会員になると新作が公開2週目から大人1,200円になることだ。また、相鉄系の時代より歴史ある『ムービル』は今のシネコンの客席とは違い、なだらかな勾配で、満席であれば、きっと前席の人の頭でスクリーンの一部が欠けてしまうと思われるが、映画のスクリーンを下から見上げるという今風でない映画的行為を無意識に体感できるメリットもある。2020年6月、ファッションビル(横浜ステーションビル)の『SIAL』が、やっとリニューアルが終わり、ルミネ系の『NEWoMAN』として生まれ変わった。そこにとうとうスクリーン9面を有するT・ジョイ系の『T・ ジョイ横浜』が入居し、横浜駅唯一の映画館として誉高かった『ムービル』は、さらに動員数が厳しくなると推測される。(なので、『ムービル』が今のところ満席になるようなことはないと思う)。観客としては、それが原因で横浜から撤退してしまうのではないかと不安もよぎる。ちなみに、そこそこの客席がある映画館なら、私は前から5番目の席の真ん中に座る。人によって違うのかもしれないが、その席が私の視野角では、若干の余白を残しつつスクリーンの4隅までをきちんと捉えることができる絶妙な距離なのだ。
さて、これから本題に入っていく。1月度の鑑賞は順調に滑り出した感があり、5本の作品を観て、どの作品も見応えがあった。4月は、人生に影響を与えてくれた大林宣彦さんが亡くなった。 遺作は、コロナの影響で7月末に公開が延期された。若い頃はいきがって、フランス映画愛好家の私は「大林映画は邪道だ」としか思えなかった。しかし、大林監督が老齢に差し掛かって、立て続けに発表する映画群は、戦争の悲惨さを真正面から捉えていた作品で、どれも鬼気迫るものがあると感じていた。映像をアレンジする大林スタイルは、若い時からまったく変わっていないのに、それがあたかも、今までに見たこともない、新しい映画のように、観客の内面を抉る執念の映画であった。7月は映画鑑賞に限っての話ではあるが、コロナ禍において新作の公開が延期になったことでジブリ作品がリバイバル公開されたのが副産物として実りがあった。『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』は劇場で観ていなかったので、見ることができて幸せな気分になった。年後半は世界選手権代表というべき黒沢清、河瀨直美の作品が並んだ。河瀬監督の作品は、若い男女が乗る(2人乗りの)自転車で”青春”の一コマを描き、そして心の移り変わりを一目瞭然にしている。黒沢映画は、まったくの勘違いかもしれないが、スタイルとして大林映画につながった。浜辺美波と北村匠海W主演の『思い、思われ、ふり、ふられ』は、同じ屋根の下に暮らすマンションで、役者たちがどのように動き回るか楽しみだったけれども、まったくそのような意志のもとに作られた映画ではなかった。浜辺美波の半ズボン姿(キュロットかもしれない)が可愛かった。そうこうもやもやしていたときに、青山真治が『空に住む』というマンションをシチュエーションにしたような作品を公開したので、定館以外まで観に行ったけれども、これも単調な作りの中で、外と内の空間を設計するが、マンションの構造を生かしたような映画ではなかったので個人的に期待外れだった。最後に昨年の鑑賞映画とベスト5を記載してこの拙文を終わりにします。

出典:公益財団法人ユニジャパン
作品名 監督 (敬称略)
2020年1月 5本
『フォードvsフェラーリ』 ジェームズ・マンゴールド
『リチャード・ジュエル』 クリント・イーストウッド
『ジョジョ・ラビット』 タイカ・ワイティティ
『パラサイト 半地下の家族』 ポン・ジュノ
『キャッツ』 トム・フーパー
2月 1本
『1917 命をかけた伝令』 サム・メンデス
4月1本
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』 キャシー・ヤン
7月 5本
『のぼる小寺さん』 古厩智之
『風の谷のナウシカ』 宮崎 駿
『もののけ姫』 宮崎 駿
『千と千尋の神隠し』 宮崎 駿
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』 グレタ・ガーウィグ
8月 3本
『コンフィデンスマンJ P プリンセス編』 田中 亮
『海辺の映画館 キネマの玉手箱』 大林宣彦
『3年目のデビュー』 竹中優介
9月 3本
『思い、思われ、ふり、ふられ』 三木孝浩
『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』 高橋栄樹
『ミッドウェイ』 ローランド・エメリッヒ
10月 4本
『働く細胞!!』 小倉宏文
『TENET テネット』 クリストファー・ノーラン
『スパイの妻』 黒沢 清
『「鬼滅の刃」 無限列車編』 外崎春雄
11月 3本
『朝が来る』 河瀨直美
『空に住む』 青山真治
『罪の声』 土井裕泰
12月
『ワンダーウーマン1984』 パティ・ジェンキンス
■2020年度映画館鑑賞ベスト5
『朝が来る』 河瀨直美
『フォードvsフェラーリ』 ジェームズ・マンゴールド
『海辺の映画館 キネマの玉手箱』 大林宣彦
『リチャード・ジュエル』 クリント・イーストウッド
『スパイの妻』 黒沢 清
2021年1月



