2019年下期劇場鑑賞作品

2019年下期の映画館鑑賞本数は19本。上期観た19本と合わせ38本達成。昨年目標に掲げた合計36本を達成した。10月は仕事で大きなイベントの準備があり、観れないことを想定していたので、年末にラストスパートで追い込んだ。年も明け、観終わって半年以上立っているので、映画の批評や分析までできる自信がないので、感想としてブログにまとめたい。

『作品名』 監督 (敬称略)

7月 2本
『新聞記者』 藤井道人

新聞社内で主人公吉岡エリカ(シム・ウンギョン)を捉えるカメラは、手持ち(肩載せ)撮影で絶えずかすかに揺れている。シム・ウンギョンの日本語の発音とアンタッチャブルな題材ともに、映像と音声が共鳴し合い、サスペンスフルな効果を生んでいる。フィクションとノンフィクションとの狭間で、心がざわついている自分がいた。

(c)2019「i -新聞記者ドキュメント-」製作委員会   
出典:公益財団法人ユニジャパン


『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』 ジョン・ワッツ

MCU映画をほとんど見ていないし、壮大なアメコミ映画の真髄や一部を語ることはできないので、ただ単に特撮だけを楽しむために観に行った。その通り、特撮のトリックをそのまま映画の核心に当てはめ、その荒技的物語運びをもろともせずに、押し切る爽快な作品であった。2000年、フロリダのユニバーサルスタジオで体感したアトラクションを未だに忘れられないので、これからも“スパイダーマン”映画は観続けるだろう。

8月 4本
『トイ・ストーリー4』 ジョシュ・クーリー

1作目のフルCG映画を観たとき、技術の進展に目を見張った。それ以降、『トイ・ストーリー』は自分にとって特別な映画になった。“友情”をメインテーマとして紡ぐ、ワンカット、ワンカットに愛情が感じられる本シリーズに今回も泣けてしまった。ピクサー・アニメーション・スタジオは未来永劫存続してほしい。

『ワイルド・スピード スーパーコンボ』 デヴィッド・リーチ

期待もせずにアマゾンプライムで1作目を見て大ファンになった“ワイルド・スピード”シリーズ。ドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)が出ない作品は、スピンオフ扱いになるのは仕方がないにしても、スーパーコンボの迫力は過去の作品に超えている。2020年夏の新作では、ヴィン・ディーゼルほか主要キャストが続投し、否が応でも期待が膨らむ。また、7作目のMEGA MAXの衝撃が今でも忘れられないので、ジャスティン・リン監督の返り咲きも楽しみ。

『アルキメデス大戦』 山崎 貴

冒頭、ハリウッド映画のVFX(Visual Effects)に引けをとらない視覚効果の出来栄え、ストーリー的には戦艦大和設計に賭けた軍人の骨太な側面も描いていたが、先の見える展開や、今大人気の浜辺美波の出番や使い方が勿体ないような気がした。

『ライオンキング』 ジョン・ファヴロー
これぞフルCGの極みというようなリアルな映像作り。内容がわかっているので、脚本的に意外性もなく、私はだんだん退屈になってきてしまった。しかし、映像をCG制作者の視点で見ると、間違いなく技術的に完成度が高い作品なのだろう。

9月 3本
『ロケットマン』 デクスター・フレッチャー
英国ミュージシャン エルトン・ジョンの半生を通じて、「なりない自分になる」という “アイデンティティ”をテーマとする王道の人間ドラマ。タロン・エガートンの歌声は出色で、全身全霊エルトン・ジョンである。家に帰ってエルトン・ジョンのベストアルバムをAmazonで購入した。

『ワンス アポン ア タイム イン ハリウッド』 クエンティン・タランティーノ
“タラレバ”って、人生において、ついつい考えてしまう。現実には「宝くじを買って当選したら」「告白してあの娘と付き合っていたら」「勉強して第一志望の大学に入っていれば」などなど、考えればきりがないし、意味がないと思う。しかし、映画はその“タラレバ”の思いを映画という器に盛って運んで来てくれる。タランティーノ監督が思いを込め料理した“映画”を食べると、意味がないと思ったことが、一変意味があるもに変わる。感謝。

『記憶にございません』 三谷幸喜
映画の冒頭、中井貴一が病院から抜け出すシークエンスからこの映画に乗ることができなかった。こんな簡単に病院を抜け出すことができる?なんてことを思いながら判断してしまう自分。こんな単純な理由で、“映画なんだから”と寛容になれる時となれない時がある自分の未熟さに勉強不足を痛切に感じてしまう。

10月 1本
『イエスタデー』 ダニー・ボイル
“タラレバ”って、やっぱり映画の題材に適している。現代において、ビートルズが存在しなかったらというストーリーを閃き、脚本化し、映像化する。ラストは、タランティーノと基本的に同じことをやっている。映画って最高!

11月 4本
『ジョーカー』 トッド・フィリップス
アーサー=ジョーカー役のホアキン・フェニックスの演技に注目が集まる。弱者の境遇に身を置くアーサーから悪の権化ジョーカーになるまでの軌跡を描いた作品だ。ひょんな事件を契機に同僚から茶色の包みで拳銃が渡され、身を守るようになったアーサーは、地下鉄内で企業に勤める会社員3人に絡まれ、彼らを撃ち殺してしまう。その事件を端緒に次々と殺人を繰り返していくことになるアーサー。彼を裏切った同僚が家を訪ねて来た時に、手土産として茶色の紙袋に入った酒ビンを見せるが、てっきり拳銃とリンクして銃殺するのかと思いきや、ハサミで首を突き刺し殺してしまう。しっかりとした脚本構造であるならば、『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロのように執拗にガンプレイを練習するアーサーの殺人方法はすべて拳銃であるべきだと思うが、お母さんを殺すのは窒息死だし、同僚は刺殺だし、こだわりがない。子ども好きで人の好い人間が、ある一線を越えてからはありとあらゆる殺害方法で、悪の道にひた走るという怖い、怖い映画だった。

『蜜蜂と遠雷』 石川 慶
楽器をやったことがないので、ピアノコンテストで、誰が一番上手いのかはわからない。上手いからといって優勝するかといえば、往々にコンテストごと(審査)は、それだけでは決まらないとも思う。このような映画の場合、ピアノ音(音楽)は後付けなので、誰が一番上手なのかを映画で論じるのは意味のないことか。しかし、指の使い方とか、身体の消耗度とかの演出は、おそらく本物だろう。指揮者役の鹿賀丈史と各ピアニストとのやり取りもプロフェッショナル感満載で、面白い部分だった。ただ、松岡茉優がコンテストに戻ってくる前の抽象的な表情はどうなのだろう。映画ってよくわからない。

『i新聞記者』 森 達也
東京新聞社社会部記者 望月衣塑子氏の仕事を追ったドキュメンタリー。この映画の森監督の位置付けは、官房長官記者会見で、これまでに許されたことがない個人の立場で質問したいという思いを胸に、望月氏に寄り添う、伴走者だ。菅義偉氏の表情や言動がテレビを通しつつ、スクリーン越しに見ると、イライラ感や回答のすり替えなどが妙に生ま生ましく伝わってくる。権力に目を光らせ、嘘や欺瞞を追求する仕事、新聞記者“i”は小さな一人の人間かもしれないが、ドキュメンタリーを通じて浮き上がる望月衣塑子氏は、まさしく大文字の”I=私”として先頭を歩いている。仕事に誇りを持って、まっとうに生きる人間がこの日本にいるのは頼もしいし、応援したい。映画(カメラ)はこのような仕事を応援するためにもあるのだ。

『ターミネーター ニュー・フェイト』 ティム・ミラー
サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)が画面に登場すると画面が眩く。28年ぶりの出演とあって歳もとっているだろうが、年齢を感じさせずに、若手女優とアクションを繰り出す。正直、全6作のストーリーのつながりや整合性、今回の時系列もよくわかっていないが、『ターミネーター』という映画ブランドは、映画ファンを魅了してやまない。

12月 5本
『アナと雪の女王 2』 ジェニファー・リー/クリス・バック
『アナと雪の女王』のメインストーリーにも、サブストーリーにも泣かされる。アニメはテーマだ。本作のテーマは、やっぱり“愛”だ。親子愛、兄弟愛、友達愛、人類愛が詰まっている。中元みずき氏の歌っている主題歌はMay J氏が歌った主題歌より難しそうで、日本人に受け入れられるのだろうか心配していたら、カラオケでも、そこそこ歌われているようで安心した。元カラオケセールスマンは、そんなところが気になった。

『ドクタースリープ』 マイク・フラナガン
ホラー映画?の傑作『シャイニング』の続編。キューブリック監督が描くシンメトリーの画面に陶然とした記憶は今も忘れない。今回山奥のホテルが再現されるとのことで、それを観るのが楽しみだった。内容は、そのホテルで繰り広げられる惨劇であると勝手に思い込んで観始めたのだが、まったく違う物語運び。意識的だろうが、夕闇を走ってホテルに向かう車や暗く、淀んだようなホテル内の感触は、『シャイニング』とはまったく別物と感じた。久しぶりに『シャイニング』を見直したい気分になった。

『ルパン3世』 山崎 貴
全編フルCGの『ルパン3世』。『アルキメデス大戦』のVFXが思いのほか良かったので、非常に期待して観に行った。CGクリエーターでもなく、アニメーターの勉強をしたわけでもないので、実際のクオリティが専門家から見たらどうなのかわからないが、個人としては、フルCGのルパンに純粋に感動した。

『カツベン』 周防 正行
伏線を回収していく周防演出を堪能した。より好みのある演出家=監督は、いかがなものかと感じるときはあるが、周防映画の竹中直人や渡辺えりは、周防映画に欠かせない。演技的、役柄的に、この人しかいないという存在感を引き出し、期待を裏切らないからだ。映画監督の矜持が作品から滲み出る。

『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』 J・J.エイブラムス
予告編も素晴らしいが、映画も素晴らしい。てんこ盛りなVFXや血脈ストーリーは詰め込み過ぎの印象もあるが、ラストの3部作、全9部作品のラスト託されたJ・J.エイブラムス監督の労をねぎらいたいと観終わって心底思った。年上だから許されるよね。

<自分勝手なおまけ>2019年度映画館で観た映画ベスト5
1位から
『ワンス アポン ア タイム イン ハリウッド』 クエンティン・タランティーノ
『運び屋』 クリント・イーストウッド
『ロケットマン』 デクスター・フレッチャー
『カツベン』 周防 正行
『i新聞記者』 森 達也
次点
『バジュランギおじさんと。小さな迷子』 カビール・カーン